認知症は女性のほうが多い ― 看護師の私が知らなかった13のこと

👴 父の認知症

父の症状がはっきり出てきてから、まだ1、2年です。

同じ質問を3回されることにも、
夜中にあちこちのスイッチを切って回ることにも、
この短い間に、驚くほど慣れました。

慣れた、というと冷たく聞こえるかもしれませんが、毎日そばで見ていると、そういうものだと受け入れるしかないんですよね。

だから私にとって認知症は、教科書の中の病気ではなくて、目の前にある、父の日常でした。

でも先日、YouTubeで一本の動画を見て、正直びっくりしたんです。

認知症は、女性のほうが多い。

看護師をしていて、しかも家族に認知症の人がいて、それでも私は、このことをちゃんと知りませんでした。

認知症は女性のほうが多い ― 知っているようで知らなかった

「女性のほうが長生きだから、その分多いんでしょう?」

最初はそう思いました。実際、それも理由のひとつです。認知症は年齢とともに増える病気なので、長く生きればそれだけリスクにさらされます。

でも、理由はそれだけではありませんでした。

女性の体には、認知症のリスクが上がりやすい”仕組み”がある。

それを知って、私の中で認知症が「父の病気」から「これから私自身が向き合う病気」に変わりました。

糖尿病があると、女性のリスクは2.34倍

動画で紹介されていた、いちばん驚いた数字がこれです。

糖尿病がある人の、血管性認知症のリスク。

リスクの上がり方
女性2.34倍
男性約 1.73倍

同じ糖尿病なのに、女性のほうが上がり方が大きいんです。

これは230万人分のデータを集めて、10万件以上の認知症のケースを解析した研究の結果です(Chatterjee S ら, Diabetes Care 2016年)。かなり大きな規模の研究で、思いつきの数字ではありません。

研究での結果では

数字だけ見ると怖くなりますよね。でも同じ研究には、こういう結果も載っています。

  • 認知症全体で見ると、糖尿病による上がり方は女性1.62倍・男性1.58倍で、男女差はほとんどない
  • 差がはっきり出たのは、血管性認知症にしぼったとき

だから「女性は認知症になりやすい」と単純に言うのではなく、「糖尿病を放っておくと、女性は”血管が原因のタイプ”で不利になりやすい」というのが正確な言い方だと思います。

不安をあおる書き方はしたくないので、ここははっきりさせておきますね。

ただ、安心していい話でもありません。血管性認知症は、生活習慣でいちばん防ぎようがあるタイプだからです。裏を返せば、やれることが残っているということでもあります。

なぜ女性のほうが不利になるのか

理由を聞いて、「ああ、そういうことか」と腑に落ちました。

閉経とエストロゲン

女性ホルモンのエストロゲンには、血管を守る働き脳の神経を守る働きがあります。

閉経を境に、これがストンと落ちる。50代の女性の体で起きているのは、そういうことなんですよね。

血圧が上がりやすくなる。コレステロールが上がりやすくなる。血糖値も上がりやすくなる。

「更年期を過ぎたら健診の数字が急に悪くなった」という話、まわりでもよく聞きませんか。

私自身、健診の結果はちゃんと見ています。「あれ?」と思う項目もありました。

でも、見なかったことにしていました。

見ていないわけじゃないんです。見ているんです。見たうえで、「まあ、今すぐどうこうじゃないし」と後回しにしていた。

そっちのほうが、たちが悪いですよね。

早く閉経した人ほど、あとの認知機能の低下が大きい傾向がある、という研究もあります。

遺伝の話(でも、そこで止まらないでほしい)

APOEという、認知症のなりやすさに関わる遺伝子があります。このタイプによっては、女性のほうが若い年代からリスクが上がるという報告もあります。

でも、私がこの記事で言いたいのは、そこではありません。

遺伝は変えられない。変えられる部分のほうが、ずっと多いんです。

女性の認知症リスクが高まる流れ:閉経からエストロゲン低下、血圧・血糖・コレステロール上昇、血管が傷み、血管性認知症リスクが高まるまでの図解

自分の努力で減らせる13のこと

ここからが、この記事でいちばん伝えたい部分です📝

認知症というと「もうどうしようもない病気」というイメージがありませんか。父を見ていると、正直そう思ってしまう瞬間もあります。

でも、世界中の研究をまとめた結果、「自分で減らせるリスク」がはっきり分かっているんです。

その数、13。

血管を傷めるもの

項目女性が気をつけたいポイント
高血圧最優先。閉経後に上がりやすくなる
糖尿病女性は血管性認知症リスクが2.34倍
高コレステロール閉経後、LDLが急に上がる人が多い
肥満更年期以降、同じ食事でも太りやすくなる

この4つは全部つながっています。そして全部、健診の紙に書いてあるんですよね。

暮らし方に関わるもの

項目女性が気をつけたいポイント
運動不足介護と仕事で、運動する時間から消えていく
喫煙血管への影響は男女問わず大きい
過度の飲酒女性は男性より少ない量で影響が出やすい
睡眠の質の低さ眠っている間に脳は老廃物を片づけている

介護をしていると、この4つがまとめて崩れます。特に睡眠。夜中に起こされるのが当たり前になっている人、多いと思います。

人とのつながりに関わるもの

項目女性が気をつけたいポイント
難聴会話が減る→人と会わなくなる、の入り口
視力の低下治療していない場合がリスク。白内障は治せる
社会的な孤立介護中は、家と職場と実家の往復だけになりがち

難聴と視力低下がリスクだというのは、私も知りませんでした。

耳が聞こえにくい
→ 会話がおっくうになる
→ 人と会わなくなる
→ 脳に入る刺激が減る

この流れなんですね。うちの両親もテレビの音量がとんでもないことになっていて、「年だから仕方ない」で片づけていました。

補聴器は、認知症予防の道具でもある。そう考え直しました。

心と頭に関わるもの

項目女性が気をつけたいポイント
うつ介護うつは、他人事ではない
教育を受けた期間の短さ今から学び直すことでも補える

「教育期間」と聞くと、今さらどうにもならないと思いますよね。でも大事なのは学歴そのものではなく、頭を使い続けているかどうかです。

新しいことを覚える、興味を持って調べる。私にとっては、たぶんこのブログがそれです。

認知症リスクを減らすために見直したい13項目:血管を守る4項目、暮らしを整える4項目、つながりを守る3項目、心と頭を守る2項目

この13項目には、根拠があります

「ネットでよく見る予防法リスト」とは違います。

これはLancet(ランセット)という医学雑誌の国際委員会が、世界中の研究をまとめて発表しているものがもとになっています。2024年の報告では14の因子が挙げられていて、そのうち頭部外傷と大気汚染(個人の努力だけでは対処しにくいもの)を除いたものが、この13項目にあたります。

そして委員会は、こう言っています。

認知症の約45%は、これらのリスクに対処することで予防できる可能性がある

45%です。半分近くが、やりようによっては防げるかもしれない。

父の姿を毎日見ている私にとって、この数字は希望でした。

今日からできる5つの習慣

13個を全部やろうとすると、絶対に続きません。動画では、優先順位をつけた5つの習慣が紹介されていました。

血圧の管理(最優先)
血管性認知症は、名前のとおり血管が原因。その血管をいちばん傷めるのが高血圧です。

血糖値のコントロール
今回の2.34倍の、ど真ん中。健診のHbA1cという項目を見てください。

睡眠の質を上げる
寝ている間に脳は老廃物を片づけています。眠りが浅いと、片づけが追いつきません。

難聴の対策と、人と会うこと
聞こえにくさを放置しない。そして、意識して人と会う予定を入れる。

心と体のケア
うつを放っておかない。新しいことを学ぶ。

今日からできる5つの習慣:血圧を管理する(最優先)、血糖値を確認する、睡眠の質を整える、聞こえとつながりを守る、心と体をいたわる

ホルモン補充療法について、ひとこと

動画では、更年期の女性ホルモン補充療法(HRT)にも触れられていました。

ただし、これは自己判断できる話ではありません。

HRTと認知症の関係は、始める年齢や続ける期間によって研究結果が分かれていて、いまも結論が出きっていない分野です。合う人・合わない人もはっきりしています。

興味を持ったら、必ず婦人科で相談してください。「認知症予防のために」とネットの情報だけで手を出すものではない、というのが看護師としての本音です。

母のことで、ヒヤッとした日

実は先日、母にも物忘れらしき症状がありました。

大事にはならずに済んで、今のところ何もありません。一度きりのことですし、誰にでもあることかもしれません。

でも、あのときの胸のざわつきは、しばらく消えませんでした。

父だけじゃないんだ。

我が家では、認知症は「父の病気」でした。母は、父を支える側の人でした。

その前提が、ぐらっと揺れた気がしたんです。

そう思った瞬間に、動画で知ったことが、急に自分ごととして重たくなりました。

母のことも、そして――私自身のことも。

介護している人こそ、順番を間違えている

父は認知症が進んでいても、自分の血圧は毎日測って、ノートに記録しています。そこだけは、驚くほど几帳面なんです。

一方の私は、看護師のくせに、血圧計を持っているのに時々しか測りません。

父のほうが、自分の体をちゃんと見ている。

これに気づいたとき、正直ちょっと恥ずかしくなりました。

介護をしている人って、こうなりがちじゃないでしょうか。相手の数字は気にするのに、自分の数字は後回し。

でも、考えてみてください。私が倒れたら、父と母とチロンは、どうなるんだろう。

母が入院したとき、それを痛いほど思い知りました。介護している人が一人抜けるだけで、家じゅうが回らなくなる。

だから、自分の血圧を測るのは、わがままじゃないんです。家族を守るための、いちばん現実的な準備なんだと思います。

まず、ひとつだけ

13個、全部は無理です。なので私は、ひとつだけ決めました。

父が血圧を測ってノートに記録するのを見習って、自分も測る回数を増やす。

血圧計はもう家にある。父はちゃんと続けている。あとは、私が同じことをするだけです。

「認知症予防」と身構えると重たいけれど、「父がやっていることを、自分もやる」なら、今日からできる。

45%は防げるかもしれない。その45%の中に、自分を入れておきたいなと思っています。

この記事は、私が動画で知ったことと、看護師として学んできたことをまとめたものです。
気になる症状がある方、健診で指摘を受けている方は、自己判断せず必ず医療機関を受診してください。
血圧やHbA1cの目標値は、年齢や持病によって一人ひとり違います。かかりつけの先生に確認してくださいね。

参考にした動画・研究

  • YouTube「特に50代以上は必見すぎる。○○だと認知症リスク2.34倍です」ひろし先生の家庭の遺伝学〜医師が言わない真実〜
  • Chatterjee S, et al. Type 2 Diabetes as a Risk Factor for Dementia in Women Compared With Men. Diabetes Care 2016;39(2):300-307.
  • Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet 2024.

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