【元コンダクターの看護師が解説】足のむくみと弾性ストッキング ― 父の日に贈って気づいたこと

👴 父の認知症

父の日に、父へ弾性(だんせい)ストッキングを贈りました。

きっかけは、1か月ほど前のこと。夕方に母から電話があり、「お父さんの足が、足首から下までパンパンに腫れてる」と。体重も増えていて、その日は夜間に循環器のクリニックを受診しました(あの夜のことはこちらの記事に書いています)。

数日後に利尿剤も処方してもらって、むくみは無事に引いてくれました。その後かかりつけの先生から「足を高くして寝るといいよ」「弾性ストッキングを履くのもいいね」と言われたんです。それで父の日に、ドラッグストアで弱圧・膝下タイプの弾性ストッキングを選んで渡しました。

……が、父はひとこと。「今はむくまないから」。正直、しばらくは履いてくれませんでした(笑)。

でも実は私、看護師として、以前は弾性ストッキング・コンダクター(正式には「弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター」)という資格を持っていました。外来で、患者さんに弾性ストッキングの選び方や履き方を指導する仕事です。今は更新しておらず資格は失効していますが、当時の知識と経験は、こうして家族のためにちゃんと役立っています。せっかくなので、弾性ストッキングについて看護師の目線でくわしくお話ししますね。

弾性ストッキングって、普通の「着圧ソックス」と何が違うの?

ドラッグストアで売っている「着圧ソックス」と、医療で使う「弾性ストッキング」は、似ているようで考え方が少し違います。弾性ストッキングは、足首をいちばん強く締めて、上にいくほど圧をゆるめる作りになっていて、この圧の差で、下にたまりがちな血液やリンパ液を上へ戻すのを助けます。むくみや下肢静脈瘤、血栓の予防などに使われます。

圧の強さには種類があります

弾性ストッキングの圧は、mmHg(ミリメートル水銀柱)という単位で表されて、日本ではだいたいこう分けられています。

  • 軽度圧迫:20mmHg未満
  • 弱圧:20〜29mmHg
  • 中圧:30〜39mmHg
  • 強圧:40mmHg以上

父に買ったのは「弱圧・膝下」タイプ。むくみの予防や軽いむくみのケアには、このあたりから始めるのが一般的です。

【ここが大事】むくみの「原因」によって、向き・不向きがあります

ここは看護師として、いちばんお伝えしたいところです。ひとくちに「むくみ」と言っても、原因はいろいろあります。

  • 静脈の流れがとどこおるタイプ
  • リンパの流れがとどこおるタイプ
  • 心臓や腎臓が関係しているタイプ

弾性ストッキングが助けになるむくみもあれば、逆に履いてはいけない・慎重にすべき場合もあります。たとえば——

  • 足の動脈の血の巡りが悪い人(末梢動脈疾患)…圧迫で血流がさらに悪くなる危険があります。本来は、履く前に足の動脈の状態を調べてもらうのが大前提です。
  • 心臓や腎臓が原因のむくみ…まずその治療が必要なこともあります。
  • 皮膚に傷や、赤く腫れて熱をもった炎症があるとき…圧迫で悪化することがあります。

むくみは、足だけの問題ではなく、体の中からのサインのこともあります。だから「むくんだから弾性ストッキング」と自己判断せず、まずは受診して、医師に相談してから使ってほしいのです。我が家も、かかりつけの先生が「履いていいよ」と言ってくれたからこそ、安心してすすめられました。

こんなむくみは、早めに受診を

看護師として、もうひとつ大事なことを。むくみの中には、早めに受診したほうがいいサインがあります。次のようなときは、弾性ストッキングを履く前に、まず医療機関を受診してください。

  • 片足だけが急に腫れて、痛み・赤み・熱をもっている(血のかたまり=血栓のサインのことも)
  • 息切れや胸の苦しさを、いっしょに感じる
  • 急に体重が増えた、顔やまぶたもむくむ
  • 指で押すと、跡が深く残ってなかなか戻らない
  • 数日たっても引かない/だんだんひどくなる

我が家の父も、両足のむくみと体重増加があって、すぐに循環器を受診しました。あとから振り返ると、あの判断は正解だったなと思います。「むくみくらい」と思わず、気になるときは早めに相談してくださいね。

外来で見てきた、いろいろな患者さん

コンダクターとして指導していた頃、本当にいろいろな患者さんがいました。毎日きちんと履き続ける方もいれば、「きつい」「履きにくい」と一度でやめてしまう方も。続けられるかどうかは、ご本人の理解や、ご家族のサポートがあるかどうかで大きく変わるなと、いつも感じていました。

私の病院では、用途によって弾性ストッキングを使い分けていました。手術のあとの血栓予防には「コンプリネット」という白い弱圧タイプを、むくみや下肢静脈瘤・リンパ浮腫などのケアには「ジョブスト」を、というように。ジョブストにはつま先のあるタイプとつま先のないタイプがあって、つま先のないタイプは付属のつるんとすべる補助シートに足を入れて、すべらせるように履きます。履くのが大変な方には、このつま先なしタイプをおすすめしたりと、その方に合わせて選んでいました。

ちなみに、この記事で紹介したストッキングは、Amazonでも見られます(私が外来で扱っていたメーカーのものです)。

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※コンプリネットは主に手術後の血栓予防に使われるタイプです。むくみ用とは目的が違うので、購入・使用の前に医師や薬剤師にご相談ください。

むくみ以外にも、こんな場面で使われています

弾性ストッキングは、むくみ予防だけのものではありません。たとえば、がんの手術のあとに起こるリンパ浮腫のケアでは、しっかりめの圧のものを使います。子宮がんの手術後の方には太もも丈、乳がんの手術後の方には腕用のスリーブ……というふうに、部位に合わせてご案内していました。

また、抗がん剤の副作用で起こる手足のしびれ(末梢神経障害)の予防に使うこともありました。しびれが出やすいお薬のとき、点滴の開始から終了24時間後まで圧迫しておくと、「しびれが軽くて済んだ」という方も実際にいて、効果を感じたものです。同じ弾性ストッキングでも、こんなにいろいろな場面で役立っているんですね。

正しい履き方・使い方のコツ

  • 座って履く(立ったままだと転倒の危険があります)
  • たくし上げず、かかとの位置を合わせて、しわ・たるみを作らない(しわが寄ると、その部分だけ圧が強くかかって、皮膚がただれることがあります。履いたあとは全体をチェック)
  • 履く時間帯は、医師の指示に従う(日中だけ履くタイプと、寝ているときに履く弱圧タイプがあります。いつ履くかを自己判断で決めないこと)
  • 脱ぐときは折り返しながらゆっくり(無理に引っぱると肌を傷めます)
  • 履いている間にしびれ・痛み・冷たさを感じたら、すぐ脱いで様子を見る
  • 伝線(でんせん)したら、迷わず新しいものに交換(伝線すると圧の効果がなくなります。寿命は半年ほどが目安)

ストッキングと一緒にできる、おうちのむくみケア

むくみ対策は、弾性ストッキングだけではありません。先生にも「足を高くして寝るといいよ」と言われましたが、おうちでできる工夫も合わせると、より効果的です。

  • 休むときは、足を心臓より少し高くする(クッションや座布団を足の下に)
  • かかとの上げ下げや足首回しで、ふくらはぎを動かす(ふくらはぎは“第二の心臓”といわれます)
  • 長時間、同じ姿勢のまま(座りっぱなし・立ちっぱなし)を避ける
  • 塩分はとりすぎない/水分は控えすぎない

※持病のある方は、運動や水分のとり方も、主治医に相談しながら進めてくださいね。

「履きにくい・続かない」失敗あるある

弾性ストッキングは、実は「買ったけど続かなかった」という声がとても多いアイテムです。

  • 圧が強すぎて、きつくて挫折した
  • サイズを測らずに買って、合わなかった
  • 自己判断で買ったら、自分のむくみには向いていなかった

失敗を防ぐコツは、足首やふくらはぎのサイズをきちんと測って選ぶこと、そして迷ったら医師・薬剤師・コンダクターに相談することです。せっかく買うなら、合うものを正しく使いたいですよね。

「今はむくまないから」と言われたら

父のように「今はむくまないから」と履いてくれないこと、実はよくあります。無理に履かせる必要はありません。大切なのは、また腫れたときにすぐ使えるようにしておくこと、そしてむくみを見逃さず、必要なら受診につなげることだと思います。弾性ストッキングは、あくまで医師のアドバイスのもとで使う「お守り」のような存在。家族ができるのは、そっと見守って、いざというときの準備をしておくことなのかなと感じています。

そして、うれしい続きがあります。つい先日、母から電話があり、「お父さん、今朝ちょっとむくみかけたからって、自分から履いてくれたよ」と。「楽になったみたい」と聞いて、私もほっとしました。無理に履かせず、そっと置いておいてよかった。必要になったときに、ちゃんと手の届くところにある——それが何より大事なんだなと、あらためて感じています😊

ただ、看護師としてひとつだけ補足を。本当は、むくんでから履くよりも、むくむ前から、普段使いで予防するほうが効果的です。「むくんでから履く」のも、履かないよりはずっといいのですが、理想は少しずつ毎日の習慣にしていくこと。父にも、無理のない範囲で続けてもらえたらいいなと思っています。

むくみ用ストッキングの一例

「まず手に入りやすいものから試したい」という方のために、ドラッグストアでも買える、膝下・むくみ用(一般医療機器)の一例をご紹介します。私が父に贈ったものとは別の商品ですが、こうしたタイプが選びやすいと思います。

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※サイズ選びには足首・ふくらはぎの採寸が大切です。持病やお薬によっては向かない場合があるので、購入・使用の前に医師や薬剤師に相談してください。

まとめ

  • 弾性ストッキングは、足首から上へ圧をかけて、むくみや血液の戻りを助けるもの
  • 圧には弱圧〜強圧まで種類があり、状態に合わせて選ぶ
  • むくみの原因によって向き・不向きがあり、使ってはいけない場合もある
  • だから必ず受診・医師に相談してから。サイズは採寸して選ぶ
  • 履くときは座って、しわを作らず、朝から夜まで。違和感があれば中止

「今はむくまないから」と言っていた父も、むくみかけたときには、ちゃんと自分から履いてくれました。家族にできるのは、正しい知識をもって備えておくこと。そして必要なときに、そっと手渡せること。同じように、ご家族の足のむくみが気になっている方の参考になればうれしいです🦵💕

※この記事は看護師としての経験をもとにした一般的な情報です。症状には個人差があり、持病やお薬によっては弾性ストッキングが向かない場合があります。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください

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