はじめての介護保険──看護師の私が父の介護で学んだ申請の流れ

介護

看護師の私でも、介護保険はちんぷんかんぷんでした

「看護師なんだから、介護保険のこともよく知ってるんでしょ?」

そう思われがちなんですが……正直に言うと、私もずっと分かっていませんでした。

そもそも介護保険って、私が看護師として働き始めた頃には、まだ世の中になかった制度なんです。ケアマネージャーという資格ができたのも、ちょうど私が育児休暇を取る頃でした。

しかも私は長いあいだ外来勤務で、介護保険にしっかり関わる機会がないまま過ごしてきました。きちんと向き合うようになったのは、十年ほど前に病棟勤務になってから。入院してくる高齢の患者さんに「介護申請、しておいた方がいいですよ」とお伝えするようになって、ようやく身近になった——そんな感じだったんです。

だから、もしあなたが今「介護保険ってなに?何から始めたらいいの?」と戸惑っていても、まったく不思議じゃありません。プロの私でもそうだったんですから。

そもそも介護保険って、なに?

むずかしい説明は置いておいて、ざっくりだけ。

介護保険は、年をとって介護が必要になったときに、デイサービスや訪問介護、福祉用具のレンタルなどを、少ない自己負担で使えるようにする仕組みです。40歳になると保険料を払いはじめ、原則65歳以上で介護が必要になったときに使えます。

「保険料は払ってるけど、使い方は知らない」——多くの方がそうだと思います。私もそうでした。

※自己負担の割合や金額は、年度や所得によって変わります。正確なところは、あとで紹介する窓口で確認するのが一番確実です。

まず、どこに行けばいいの?

ここが一番つまずくところだと思います。

地域によって少し違うのですが、私の住む地域では、まず市役所で手続きをします(お住まいによっては「地域包括支援センター」が窓口のこともあります。お住まいの市区町村名と「介護保険 申請」で検索すると出てきます)。

そして、これは看護師として強くお伝えしたいことなのですが——介護申請は、思い立ってすぐに使えるようになるものではありません。 申請してから認定が出るまで、それなりに時間がかかります。

だから私は病棟で、入院してきた高齢の患者さんやご家族に「今はまだ元気でも、申請だけは早めにしておくと安心ですよ」とお伝えしていました。いざ必要になってから慌てないために、早めの一歩がほんとうに大事なんです。

認定までの流れと、知っておいてほしい「落とし穴」

申請をすると、こんな流れで進みます。

  1. 市役所などに申請する
  2. 調査員の方が自宅に来て、本人の様子を聞き取り・確認する(訪問調査
  3. かかりつけの先生が「主治医意見書」を書く
  4. それらをもとに、どのくらい介護が必要か判定される
  5. 結果が届く

ちなみにこの主治医意見書は、かかりつけのお医者さんに書いてもらう書類です。だからもし「うちの親、特に通っている病院がないな」という場合は、普段から相談できる“かかりつけ医”を一つ作っておくことをおすすめします。風邪や血圧などで普段から診てもらえる先生がいると、いざ介護申請が必要になったときもスムーズですし、体調の変化にも早く気づいてもらえます。元気なうちから「かかりつけ」を持っておくのは、親にとっても家族にとっても安心につながります。

さて、ここで私が父のときに痛感した落とし穴をお伝えします。

父は——時代的なものもあるのかもしれませんが——調査の人の前だと、つい頑張ってしまうんです。普段は腰が痛くてできないことも、調査員さんを前にすると「できます」「自転車だって乗れます」と、できることを一生懸命アピールしてしまう。

その結果、実際よりも“元気な人”として評価されてしまいがちなんです。これだと、本当に必要な介護のレベルが正しく伝わりません。

そこで私がしたのは——調査のあと、父がいないところで、調査員さんに普段の本当の様子をそっとお伝えすることでした。「実は普段は腰が痛くて立つのもつらいんです」「これは今日だけ頑張っています」と。

もし同じように「うちの親、人前だと張り切っちゃうタイプ……」という方がいたら、普段できないこと・困っていることを事前にメモしておいて、調査員さんに伝えるのがおすすめです。本人を傷つけずに、でも実態を正しく伝える。ここ、本当に大事なポイントです。

認定が出たら——ここからが本番

結果が届いて「要支援」や「要介護」の認定がつくと、いよいよサービスが使えるようになります。

ここで頼りになるのがケアマネージャーさんです。本人や家族の希望を聞いて、「どのサービスをどう使うか」という計画(ケアプラン)を一緒に作ってくれます。

使えるサービスには、たとえばこんなものがあります。

  • デイサービス(日中、施設で過ごして入浴や食事、レクリエーション)
  • 訪問介護(ヘルパーさんが自宅に来てくれる)
  • 福祉用具のレンタル(手すり、車いす、介護ベッドなど)

ちなみに——これも経験談ですが、ケアマネージャーさんは、合わないと感じたら変えてもいいんです。私も一度変えたことがあります。遠慮しなくて大丈夫。家族とケアマネさんの相性は、介護を続けるうえでとても大切なので。

最初は「デイサービスなんて行きたくない」と言っていた父が、今では「明日やな」と楽しみにするようになりました。合うサービスに出会えると、本人も家族もずいぶん楽になります。

看護師として、そして娘として、最後にひとこと

介護保険って、知らないうちは本当にとっつきにくい制度です。でも、知っておくだけで、いざというときの安心感がまるで違います。

最後に、大事なことを3つだけ。

  1. 申請は無料です。 お金はかかりません。
  2. 「まだ元気だから」と思っても、早めの相談・申請でOK。 認定には時間がかかります。
  3. 迷ったら、まずお住まいの市区町村の窓口(市役所や地域包括支援センター)へ。 プロが一緒に考えてくれます。

看護師の私でも、最初は何も分かりませんでした。だから、今まさに戸惑っているあなたも、大丈夫。一歩ずつで十分です。同じように親の介護に向き合う誰かの、ほんの少しでも力になれたら嬉しいです。

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