我が家には、長いあいだ困っていたことがありました。実家の父が、Wi-Fiの電源を、無意識にプチッと切ってしまうんです。
雨戸を閉めるときなどに、ついでにコンセントを抜いてしまうみたいで。そのたびに屋外の防犯カメラがオフラインになって、私はヒヤッとしていました。離れて暮らす親の見守りに、カメラは欠かせませんから。
イラスト付きの張り紙作戦
そこで前に、ひとつ工夫をしました。「触らないでね」と文字で書くだけじゃなくて、電源の近くにイラスト付きの張り紙を貼ってみたんです。認知症の父にも、ひと目で「これは大事なものなんだ」と伝わるように。
コンセントの絵に大きくバツ印をつけて、「この線は抜かないでね」とひらがなで大きく添えました。なるべく分かりやすく、でも命令口調にならないように。父のプライドを傷つけない言い方は、いつも気をつけていることのひとつです。

これが、思いのほか効果てきめんで。あの日以来、父がWi-Fiを切ってしまうことは、ぱったりとなくなりました。「よかった、これで安心」と、私はすっかりほっとしていたんです。
ところが、またオフラインに
それなのに——です。
この間、またカメラがオフラインになっているのに気づきました。「あー、また切ってるわ」。私はとっさにそう思いました。せっかく張り紙したのに、また元に戻っちゃったのかな、と。
すぐに母に電話して、「お父さん、また電源切ってない?確認して」とお願いしました。すると母は、「えっ、切れてないよ」と、どうもピンときていない様子。
私は内心、「もう、お母さんまで分かってないなぁ」と、少しイライラしてしまったんです。今思えば、これがいけなかった。
翌日、確認しに行ってわかったこと
次の日、気になって実家へ確認しに行きました。
我が家のWi-Fiは、屋外カメラとの通信がいちばん良い2階にセットしてあります。そして、5月とは思えないような、この暑さ。まだ5月の終わりだというのに、日中はもう真夏のよう。部屋にこもった熱で、機械がちょっとおかしくなっていたんです。
そういえば——去年の暑い時期も、同じことがありました。気温が上がると、Wi-Fiの調子が悪くなる。ためしに電源をいったん切って、もう一度入れ直してみたら、何事もなかったようにちゃんと作動しました。
つまり、犯人は父じゃなかった。犯人は、この季節外れの暑さだったんです。
父は、ちゃんと守れていた
父は、あの張り紙をちゃんと守ってくれていました。一度も電源を切ったりしていなかった。それなのに私は、「どうせまた父がやったんだろう」と、頭から決めつけてしまっていたんです。
介護をしていると、何か困ったことが起きるたびに、つい「認知症だから」「また父が」と、本人のせいにしてしまうことがあります。長く介護していると、それが癖みたいになってしまう。
看護師として、認知症のことは分かっているつもりでした。でも、知識があることと、その人を疑わずにいられることは、また別なんですね。頭では分かっていても、心がつい先回りしてしまう。
でも、そうじゃないことだって、ちゃんとある。父を疑ってしまったこと、母にイライラしてしまったこと、ちょっと反省した出来事でした。父よ、ごめんね。
同じように決めつけてしまう人へ
もし今、あなたも「また親がやった」と決めつけそうになっていたら——一度だけ、深呼吸して、ほかの原因も探してみてください。案外、本人のせいじゃないこともあります。
決めつけずにいられたら、お互いにちょっとだけ、気持ちが楽になる。今日はそんなことを、5月の暑さがもたらしたWi-Fi騒動から教わりました。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


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