認知症の父が床も壁もびちゃびちゃに。主導権を握ってきた人の介護

👴 父の認知症

半年ほど前のことを思い出したので、書いてみる。

父は昔からきれい好きだった。そして家族の中でずっと主導権を握ってきた、そういうタイプの人だ。何でも自分で決めて、自分のやり方を通してきた。家のこと、お金のこと、家族の予定まで、すべて父を中心に回ってきた。その性格は、認知症になった今も、形を変えてしっかり残っている。

トイレがびちゃびちゃに

ある日、母から連絡が来た。父が突然、トイレの中でホースを使って水をまき始めたというのだ。まるで公衆トイレを掃除するかのように、床も壁もびちゃびちゃに。母が慌てて止めに入ったけれど、父は「何が悪いねん」というテンションで、悪びれるようすが全くない。

きれい好きの父なりの「掃除」のつもりだったんだと思う。でも、認知症で何かが混乱して、やり方がそうなってしまった。本人の中ではきっと、ちゃんと筋が通っているのだ。だからこそ、止められると納得がいかない。

ずっと父に従ってきた母にとって、「何が悪いねん」という態度で来られると、強く言い返せない。止めたくても、なかなか止められない。その難しさが、母をとてもしんどくさせていた。長年の力関係は、こういうときにそのまま出てしまう。

今度はガスコンロをガレージへ

別の日には、こんなこともあった。実家は古い家で、ガスコンロはビルトインではなく、取り外せるタイプのものを使っている。

父はそのコンロをきれいにしたかったのか、わざわざ外してガレージまで運んで、またホースでびちゃびちゃに水洗いしていた。母が気づいた時には、コンロはガレージでびしょ濡れになっていた。重たいコンロを一人で運んだのかと思うと、その行動力にちょっと驚いてしまう。

「掃除したかった」という気持ちは、父なりに正しい。でもやり方が、どこかでずれてしまっている。そしてそれを指摘しても、「何が悪いねん」と返ってくる。悪気がないぶん、家族はどう対応していいか分からなくなる。

ガスがつかない!からの、まさかの復活

しかも、乾ききっていないままコンロを元に戻したものだから、ガスがつかなくなってしまった。母から「ガスが使えない」と電話がかかってきた。

私は内心「これはIHに替えるいいチャンスでは!」と思った(笑)。でも、ちょっと待てと。たまたま天気が良かったので、コンロを一日しっかり晴天干しにしてみることにした。直射日光に当てて、しっかり水分を飛ばすイメージだ。

すると……復活した。念のためガス屋さんに確認の電話を入れたら「乾いていれば使っても大丈夫」とのこと。結局そのガスコンロは、今も現役だ。

倹約家の母にとっては、また使えるようになったのがとても嬉しかったらしい。IH化計画は、あっさり却下された(笑)。水濡れで使えなくなった家電も、慌てて処分せず乾かしてみると復活することがある、というのは思わぬ学びだった。もちろん電気系統が濡れた家電は危険なこともあるので、心配なときは必ず専門業者に確認してから使うのが安心だ。

主導権を握ってきた人の認知症は、また違う難しさがある

認知症の介護の難しさは人それぞれだけど、ずっと家族の中で主導権を持ってきた人の場合、また違う難しさがある。

本人は「正しいことをしている」という自信があるから、止めようとすると反発される。長年の関係性の中で、つい強く言えなくなってしまう家族もいる。母がまさにそうだった。頭ごなしに否定するとさらに頑なになるから、対応にはちょっとしたコツや根気がいる。いったん気持ちを受け止めてから、さりげなく別の方向へ促すと、すんなりいくことも多い。

笑えるエピソードのようで、その裏にある母のしんどさを思うと、複雑な気持ちになる。

おわりに

認知症は、本人だけでなく、家族みんなに影響を与える。特に長年連れ添ったパートナーへの影響は、子どもが思う以上に深いものがある。日々一緒に過ごす母は、笑い話の何倍も大変な思いをしているはずだ。

母の「しんどい」を、もっとちゃんと受け止めないといけないな、と改めて思う。笑い飛ばせる出来事の裏側に、誰かの我慢がある。そのことだけは、忘れずにいたい。

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