半年ほど前のことを思い出したので書いてみる。
父は昔からきれい好きだった。
そして家族の中でずっと主導権を握ってきた、そういうタイプの人だ。
トイレがびちゃびちゃに
ある日、母から連絡が来た。
父が突然、トイレの中でホースを使って水をまき始めたというのだ。まるで公衆トイレを掃除するかのように、床も壁もびちゃびちゃに。母が慌てて止めに入ったけれど、父は「何が悪いねん」というテンションで、悪びれるようすが全くない。
きれい好きの父なりの「掃除」のつもりだったんだと思う。でも、認知症で何かが混乱して、やり方がそうなってしまった。
ずっと父に従ってきた母にとって、「何が悪いねん」という態度で来られると、強く言い返せない。止めたくても、なかなか止められない。その難しさが、母をとてもしんどくさせていた。
今度はガスコンロをガレージへ
別の日には、こんなこともあった。
実家は古い家でガスコンロはビルトインではなく取り外せるタイプのものを使用している。
父はそのコンロをきれいにしたかったのか、わざわざ外してガレージまで運んで、またホースでびちゃびちゃに水洗いしていた。
母が気づいた時には、コンロはガレージでびしょ濡れになっていた。
「掃除したかった」という気持ちは、父なりに正しい。でもやり方が、どこかでずれてしまっている。そしてそれを指摘しても、「何が悪いねん」と返ってくる。
しかも、乾ききっていないままコンロを元に戻したものだから、ガスがつかなくなってしまった。母から「ガスが使えない」と電話がかかってきた。
私は内心「これはIHに替えるいいチャンスでは!」と思った(笑)。でもちょっと待てと。たまたま天気が良かったので、コンロを一日しっかり晴天干しにしてみることにした。
すると……復活した。念のためガス屋さんに確認の電話を入れたら「乾いていれば使っても大丈夫」とのこと。結局そのガスコンロは今も現役だ。
倹約家の母にとっては、また使えるようになったのがとても嬉しかったらしい。IH化計画は、あっさり却下された(笑)。
主導権を握ってきた人の認知症は、また違う難しさがある
認知症の介護の難しさは人それぞれだけど、ずっと家族の中で主導権を持ってきた人の場合、また違う難しさがある。
本人は「正しいことをしている」という自信があるから、止めようとすると反発される。長年の関係性の中で、つい強く言えなくなってしまう家族もいる。母がまさにそうだった。
笑えるエピソードのようで、その裏にある母のしんどさを思うと、複雑な気持ちになる。
認知症は、本人だけでなく、家族みんなに影響を与える。特に長年連れ添ったパートナーへの影響は、子どもが思う以上に深いものがある。母の「しんどい」を、もっとちゃんと受け止めないといけないな、と改めて思う。


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